日中大学フェア&フォーラム 2011

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第2回 日中大学フェア&フォーラム-3日目

第2回日中大学フェア&フォーラム、大盛況にて閉幕

「第2回日中大学フェア&フォーラム」3日目の10月11日は、東京・大手町のサンケイプラザでフォーラムが開催され、基調講演とパネルディスカッションが行なわれた。


フォーラムの開会にあたり吉川弘之・科学技術振興機構・中国総合研究センター長が挨拶を行なった。この中で吉川センター長は「グローバル時代を迎えて大学の使命は多様化している。日中の戦略的互恵関係を進めるために日中の大学で連携していくことが重要である。政府間レベルでも積極的に取り組んでいきたい」と語った。

また中国政府教育部郝平副部長(副大臣)からの開会式への連帯のメッセージが代読された。?副部長は「日中の教育面での交流は、1000年も前から遡るものであり歴史がある。これからは新しいチャレンジとチャンスというキーワードで推進しよう」と呼びかけた。


続いて日中3人が基調講演を行なった。基調講演者は次の通り。

王樹国・ハルビン工業大学学長は、まず「大学が未知の探求をすることは社会的な責務である。大学人は象牙の塔に閉じこもらず、社会に開かれた学問を追求するべきだ」と前置きして要約、次のように語った。ハルビン工業大学は、時代と社会のニーズに応えてこの10年間、組織的な改革を行なってきた。グローバルな視点で国際的に多くの企業との連携を結び、あらゆるところから知識情報を吸収することにしてきた。現在、中国内外の700企業と提携しており、アメリカが一番多い。次が日本企業であり、19パーセントを占めている。また日本の18大学と交流しており、過去には日本政府からは4億5千万円の助成金をもらって大学のさまざまな整備に役立った。これからは、交流、相互理解、信頼の3つが重要である。若い世代の人材育成に力を入れて、人類の発展のために取り組んでいきたい。

続いて濵口道成・名古屋大学総長は、同大の先人の中から素粒子論の坂田昌二博士、平田義正博士の2人の傑出した業績と人となりを紹介し、そのうえで名古屋大学の人材育成などについて要約次のように語った。 

坂田・平田博士の両巨人は、「学問の前にはみな平等」であることを実践して人材を育てた。基礎研究の成果をもとに事業に結び付けるまでは長い歳月がかかる。赤崎勇博士の青色発光ダイオードは、基礎研究の成果から事業まで実に39年間かかった。価値ある成果をあげた先人たちの人となりや教育方針などを見ると次のようなことが言える。

  1. 偉大な研究者を育てた老師の存在がある。
  2. 学生も教師も対等である。
  3. 強い意志力を育てる。
  4. 研究者個人の自立を尊重する。
  5. 偉大な成果には20年から30年かかる。

このような状況の中で名古屋大学の目指すものは、自由闊達な学風であり、世界屈指の成果を目指すことであり、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育てることである。また世界に通用する人材育成をするためには、分野を超えた思考と研究交流をしなければならず、海外への留学を義務付けている。また女性リーダーを育てるために様々な学内整備を実施している。若い世代に強靭な精神力を育む大学の文化を確立していきたい。

最後に壇上に立った中鉢良治・ソニー株式会社取締役代表執行役副会長で日本経済団体連合会産業技術委員会共同委員長、総合科学技術会議議員は、まず1995年から始まった日本の科学技術基本計画のこれまでの経過を紹介した。第4期基本計画は2011年度から5年になっているが、閣議決定の直前に大震災に見舞われて8月になってやっと策定されたことを報告した。そのうえで、ソニーの産学連携の取組みについて要約次のように語った。

ソニーの産学連携の始まりは東北大学との連携からであった。ソニー側から研究者を大学に送り込み、大学からは仙台の工場に人材を送り込んでもらった。アイデアが生まれ、量産化のめどをつけ事業化するまでのエネルギーを考えるとアイデア1、量産化10、事業化100という関係になる。優れたアイデアを事業化するのに100倍のエネルギーが必要だということだ。産学連携は絶対に必要であり、ソニーは中国に早くから拠点を作ってきた。2005年には中国にラボを建設し、研究開発も中国科学院と連携で行なえるようになった。企画・設計・試作・量産という一気通貫まで行なえるようになり、共同研究の体制が整った。これからは、日中韓の大学間交流も重要であり、競争力を高めながら社会貢献したい。

日中大学フォーラムの午後の部は、4つのセッションが開催され、意見発表と討論が行なわれた。


「大学改革、産学連携促進と基礎研究の未来」

概要:日本、中国ともに産学連携に向けた取り組みはそれぞれ大きく進化しています。一方で、大学のもうひとつの役割である基礎研究を巡る環境は必ずしも良い方向に進んでいるとはいえない状況です。センションでは、日中それぞれの大学がこれから産学連携と基礎研究の双方をどのようにバランスよく推進していけばよいか議論します。

モデレータ:

  • 東京大学副学長 松本洋一郎氏

パネリスト:

  • 中国科学技術大学副学長 陳初昇氏
  • 華中科技大学常務副学長 林萍華氏
  • 愛媛大学学長 柳澤康信氏
  • 秋田大学学長 吉村昇氏

このセッションでは、日本側から2004年の独法化以降、学長への権限と資金の集中によってリーダーシップが発揮できるようになったことが発言された。そして日中とも競争的資金の確保の方法について大きな違いはなく、中国の大学においても直接投資はせずソリューションの提供としていることが発言された。さらに大学の特徴ある基礎研究、基盤研究が基になり産学連携が推進されるべきであるとの認識で一致した。


「日中両国の留学政策と留学帰国者の有効活用」

国際的な『頭脳循環』を積極的に導入している中国の留学生政策と留学生の拡大を目指しながら、留学に関心のない学生が増えている日本とそれぞれの今後の取り組みを官と学の双方の視点から議論を展開した。 

モデレータ:

  • 立命館大学総長 川口清史氏

話題提供:

  • 東京大学北京事務所長 宮内雄史氏

パネリスト:

  • 中国留学服務中心主任 白章徳氏
  • 文部科学省大臣官房付(高等教育局担当) 奈良人司氏
  • 広島大学学長補佐 佐藤利行氏

文部科学省の奈良人司氏によると、2009年に日本に留学している外国人学生数は8万6173人であり、そのうち2009人が日本政府のスカラーシップ留学生である。政府は2020年までに「留学生30万人計画」を打ち出しており、様々な施策を進めている。日本での留学生の出身国は中国が圧倒的に多く、今後もこの傾向は続くだろう。日本での中国人留学生が多いのは、多くの国民が体験的に分かっているが、パネリストの発言ではせっかく留学生を送り出しても、その後帰国した留学生体験者らとのネットワークが不十分であったり、受け入れている大学側の対応が不十分であったりするケースも多いとの印象を受けた。こうした課題を解決しながら、今後に実のある留学生制度をどう発展させるべきか。

中国の白さんは、中国からの留学生の送り出しと外国からの受け入れ、さらに帰国した留学生の活動支援までを行なっている中国留学服務中心の活動を紹介した。その中で印象的だったのは、中国では帰国した留学生の口コミが非常に大事であるとして、留学生の本当の要望を聞き入れて対応することの重要性を訴えた。

また、広島大学の佐藤さんは、広島大での留学生増加対策を紹介し、北京での研究センターの活動などを紹介した。東大の宮内さんは、「変化する中国の状況認識と大学生の動向」とのタイトルで日本と中国の経済と生活面での実態について様々な指標をもとに分析しながら日中両国の留学生の状況を説明した。


震災特別セッション「大震災と大学の役割―科学技術と社会の調和を目指した日中大学パートナーシップの構築―」

四川大震災を経験した中国と東日本大震災を経験した日本、それぞれの大震災の体験から災害などの危機管理における大学の役割を再考するセッションだった。共に震災を乗り越えるための日中の大学が科学技術と社会の調和を目指した新たなパートナーシップの構築に向けた議論を行なった。

モデレータ:

  • お茶の水女子大学学長 羽入佐和子氏

パネリスト:

  • 中国地質大学副学長 傅安洲氏
  • 岩手大学副学長 岩渕明氏
  • 東北大学副学長 北村幸久氏
  • 岩手医科大学学長 小川彰氏
  • 四川大学副学長 石堅氏

印象に残ったのは、なぜ四川大学は、震災後三日間で大学を再開できたのかという理由である。中国側の発表では、大学は地域に影響力があり、地域に責任を持つ存在であり、その再開が非常に注目されていたことが大きな理由となった。専門家による科学的検証と正しい情報を基に再開を判断したという。

またセッションのまとめとしては、大学は社会の良心であり、災害の体験を共有して新たな知を構築することが重要であることが確認された。災害は全世界的な課題であり、その課題解決には国際的な交流が必要であることが改めて認識された。


「大学の国際化とグローバル人材の育成」

日中の大学が抱える共通の課題のひとつである国際化についてそれぞれの取り組みを発表した。今求められるグローバル人材とはどのような人材なのか、日中それぞれ異なる背景から大学教育の今後のあり方について議論を行なった。

モデレータ:

  • 東京理科大学学長 藤嶋昭氏

パネリスト:

  • 中国政法大学副学長 時建中氏
  • 東北師範大学学長 史寧中氏
  • 筑波大学副学長 辻中豊氏
  • 早稲田大学副総長 内田勝一氏
  • 天津外国語大学学長 修剛氏
  • 西安交通大学学長 鄭南寧氏

このセッションでは日中の大学人各3人の合計6人がパネリストになったが、国際化時代の人材育成についての意見のベクトルは同じ方向を向いており、英語をキーワードにしたグローバル人材の育成という点でも意見は一致していた。

ディスカッションを通じて話題になったのは、国際化と「英語という言語」の問題である。確かに日中の大学ともに、国際化の指標として学生の英語力、英語による講義などを重要視しているが、果たしてそれが真の国際交流や異文化理解につながっているのか。英語が大事なのではなく、大学教育ではやはりカリキュラムが大事であるという点では日中の大学人の意見は当然だが一致していた。英語が大事だという認識は、情報や成果の内容を外国に発信する際の手段、ツールとしてこれが最適であるということである。英語圏以外の人で母国語が違う人同士が会話をするには、英語が最適であるという現状は誰もが認めるが、その国の本当の文化を学ぶにはその国の言語が重要であるという点でも一致した。日本へ留学した中国人が、英語だけで授業を受けるのでは意味がない。またそれほど英語の授業を日本の大学が用意しているわけでもない。日中の大学とも英語による授業が増えてはきているが、やはりその国の言語をマスターすることで文化を学びコミュニケーションを身に付けることが大事である。

これからは教員の英語力も非常に重要になっていることでも一致した。中国側からは、中国に留学する日本人が増えることを希望していることも表明された。国際化時代に人材育成の課題と取組みの方向性は、日中でほとんど一致している点で非常に面白いパネルディスカッションだった。

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